Karkhanisanchi Waari (Marathi/2020)を東京国際映画祭で。
邦題は『遺灰との旅』。何しろプレミエ上映なので、レビューを探しても一切見つからない。マラーティーらしい、間合いで笑わせるタイプのダークなコメディー。男どもはしょうもなく、女たちが強い。大家族制の欺瞞とうわべの取り繕いに対してフラストレーションを募らせるのは男である主人公だが、ガールフレンドはするりと抜けてみせる。円満な家族の家長を演じていた人物の葬礼を完遂する過程の旅で、大家族の成員間の軋みがひとつひとつ露わになり、最後に崩壊する。それが家長が買ったミニバンとも重なっていき、それから先祖伝来の屋敷の瓦解とも符合する様は見事。サブプロットとしてプネー郊外のデフに亡夫の愛人の存在を知って赴く妻のとことん銭ゲバのエピソード。ここもある種の聖地らしい。ひとりアメリカに渡りNRIとなった四男が、パンダルプルに近づくにつれて鼻をハンカチで押さえるようになるとか、演出が細かい。最後に遺灰ではなく遺品が流されるがどこかに打ちあがる映像があったが、あれの意味が気になった。ワールカリー派の遊行者たちの音楽もよかった。