Sir (Hindi - 2018)を試写で。邦題は『あなたの名前を呼べたなら』。
サウスファンなのにここのところ良質なムンバイ映画を立て続けに見ている。行きたくなってしまうではないか。ムンバイの最高級フラットに住む金持ちの独身男と、マハーラーシュトラの田舎から出てきて住み込みメイドとして働く若い未亡人との交情。女性の方も極貧というわけではない。けれど、両者の間には絶望的なまでの隔たりがあり、二人が男と女として向き合うことを阻む。その隔たりが、体格、肌の色、話す言葉、話し方、その他諸々に結実化して、どんなもの知らずにもハッキリと感得できるように画面に示される。カーストではなく、社会的な階層の違いなのだ。彼女が洒落たブティックから追い出されるシーンはかなり刺さる。旦那様とメイドとの間の恋愛あるいは火遊びというのは、インド映画で繰り返されてきたモチーフだけど、往々にしてメイド役をシュリーデーヴィーのようなゴージャスすぎる女優が演じることによって、意味が薄められてしまうことが多かった。結末は少し楽観的すぎるように思ったがどうだろう。二人がアメリカに逃れるなら、まだ現実味があったかもしれないが。
Sir (Hindi - 2018)を試写で。邦題は『あなたの名前を呼べたなら』。
追記:メイドの方が菜食主義で、雇い主のために我慢して肉を調理する&未亡人となったら再婚は絶対に認められない、この二点からして、メイドは実はバラモンである、あるいはバラモンではないがアッパーカーストであるという可能性がある。肉を普通に食べる雇い主は、伝統的アッパーカーストであるかどうかよりも、現代のパワーエリートであるというのが肝なのだと思った。