僕の記憶に触れた部分は、「夏夜の虫の音」と「おばあちゃん」と「狼狽える両親」
実家が畑と雑木林の隣にあったから。また、実家では真夏の夜は、クーラーを入れずに窓を開けっ放しにしておく慣習があったので、夏の夜は虫の音がするんだよね。窓から入ってくる夜風を思い出す。
僕は両親が共に働いていて、よく祖父母の家に預けられた。今思うのは、当時の祖母(多分、今90歳後半ぐらいの年代の人)は戦前生まれで、思春期の頃に戦争を体験しているが故だと思うが、戦後生まれの人たちとは色々と違ってたんだよね。価値観とか思想信条とかその佇まいが違ってた。色々な作法をうるさく細かく言われたと思いきや、頑固なところもあり、ある面では大雑把で図太くワイルドだ。今の人が見たら、理解不能だと思うだろう。でも多分、今の人とは価値観が違うってことなんだよね。僕らが見えていなかった「価値」を重んじているんだと思う。僕から見ると祖母の振る舞いは矛盾しているのだが、祖母の中では一貫した「何か」があったんだろう。
僕は小学校低学年ぐらいまでは祖母と過ごした時間が長かった。だから、この映画の「おばあちゃん」と僕の祖母が重なった。