『ブラック・クランズマン』
KKK構成員を時代や経済に置き去りにされた哀れむべきホワイト・トラッシュと喝破するスパイク・リーの慧眼。末端の連中が煽動に乗って暴走しても組織の上の連中は責任なんか取りやしない。当然、シャーロッツビルを頂点とするトランプ後に増加したヘイトクライムが念頭に置かれている。
逆説や皮肉を多用する複眼的な作劇は特定の人種や人物への安易な感情移入を許さない。それが良いイメージであれ悪いイメージであれ、人種に対する感情を乗せやすいステロタイプの撤廃こそが反差別闘争の核心だとスパイク・リーが理解しているからだろう。
悪い白人を倒すカッコイイ黒人の図式で客の溜飲を下げることは人種差別を肯定することなのだ。
だからこの映画はKKKの末端構成員を敵であっても悪ではなくそれぞれに家族や仕事がある生活者として描き出す。英断だと思うし、大変な力作だったと思う。