「VORTEX」
きついけどあまりにも現実のことだったし、思ったより最悪のことは起きなかったから良かった…鑑賞後の気持ちが既に、お通夜で故人の話をする気持ちである…
「VORTEX」
お母さんが、脳が死にゆく中の明確な意思をもって自死をしたことは、初めは共感をもって見た。それが誰にも気付かれずに「またボケてガスをつけっぱなしにしてしまったんだな」と思われていそうなところがどうしようもなく悲しい。それにしてもあの行動力を見るに、お父さんの心臓発作ももしや意図的に…と思い当たってから、これは普通の老夫婦が寿命を全うする話ではなく、元医者のお母さんによる、自分たちを自分で終わらせる話なのだという解釈となり、改めて戦慄する。
「VORTEX」
意図的に発作を起こしたのかどうかなど、なんの証拠もないし、問題ですらないのかもしれない。これも憶測だけど、自分の生活で手一杯の息子に迷惑をかけないようにしたのだとしたら、その作戦は本当にうまく成功してしまっている…
「VORTEX」
ほんとにこわいのは現実のほうで、こんな綺麗に自分で人生を終わらせることはできないことも多くて、居間で倒れたお父さんも病院で亡くなることができたのはまだラッキーで…CLIMAXとかで容赦のなかったギャスパー・ノエも本作ではまだ優しいというか、理想を描いているのか…
「VORTEX」
「映画は夢」とか「夢のまた夢」みたいな言葉は出てくるけど、極端なことを言えば、これは夢ではなく、そういう意味では映画ではなく、現実そのものだった。老いた人が死んでいくことは分かっていることなのに、ずっと悲しかった。どうしようもない事は本当に悲しい。