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チャイコフスキーの妻鑑賞。 

不幸な結婚の話だし、色も灰色だし、大変気が滅入る話だった。結論としては、結婚なんてすべきじゃなかった二人の物語。だけど、当時の社会だと、結婚せざるを得なかった二人ってことでもある。年齢とか性的指向を隠さねばならないとか。それは、(最後に書くけど)今見るには面白い話で、陰鬱だけど嫌いじゃない。
どちらにとっても不幸ではあるけれど、どちらも大変身勝手なのは素敵だ。素敵というのは、どちらかが特にかわいそうに見えたりしないという意味で。好意もない相手に執着されることもかわいそうだし、見返りの見込みのない相手に心酔するのもかわいそう。だけど、世間体と持参金目当てのピョートルと、ピョートルだけが目当てのアントニーナ、結局二人とも自分のことしか考えてないから、そりゃあ上手く家庭が築けるわけない。
ピョートルの弟や友人から彼とと離婚してほしいという話を散々された後、「まぁ、あんな有名な人がうちに来てくれたわ」で終わってしまう、会話の通じなさ。(あの時の義弟の顔!!!😂)

チャイコフスキーの妻鑑賞。続き。 

ピョートルの為に離婚してやってくれとみんなに言われて、ピョートルの為なら何でもしますとも言うけれど、離婚はしない。「何でもします」と「離婚しない」に、彼女の中では矛盾がない。
そういうところも怖いけれども、他の男との間に生まれた息子にピョートル・ペトローヴィチと名付けるのも、彼女の中にピョートルと家庭を築いて暮らしている幸せなヴィジョンがあるのもだいぶ怖い。しんどい狂い方だ。それでも、ピョートルにとっては悪夢に違いないけれど、アントニーナは悪妻と呼ぶにはピュアすぎるなぁという印象になった。悪意がないから。
ロシアが誇る偉大な音楽家が、時代や国によっては犯罪だし、今のロシアでも良しとはされていない同性愛者だった。ピョートルの性的指向は公然の秘密で、仲間も家族も知ってるし許されていて、アントニーナの家庭よりよほど互いに対する理解と受容がある。そういうところが、「同性愛は伝統的な家族という価値観を脅かすからよろしくない」みたいな今のロシアの政策に対するカウンターに感じられたのも良き。

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