『女王陛下のお気に入り』三回目
この映画の本質はエマ・ストーンが演じる没落貴婦人アビゲイル・ヒルの成り上がりにあり、女性版『バリー・リンドン』と言っても過言ではない。
女王が絶対的に君臨し、女王の幼なじみ兼側近のサラや軍の上層部、政治家といったいわゆる貴族階級と侍女、女中、立哨する警備兵、娼館の娼婦など、徹底的に階級社会を見せる。『ゴスフォード・パーク』のような階級の差を見せるがそこからサスペンスの要素を引き、『バリー・リンドン』の成り上がり泥々人間ドラマと『マリー・アントワネット』のデフォルメ王室ドラマをミックスした感じである。
完璧主義の出来る側近のサラの隙間を縫うようにアビゲイルが要所要所で木下藤吉郎(豊臣秀吉)の草履温め作戦……いや足のマッサージと見せかけてクンニ作戦ような戦術でアン女王のハートを鷲掴みする。
この作戦やアビゲイルのオキニのイケメン大佐もアン女王を取り込んでゲットしたり、サラを貶めるある仕掛け、そしてあらゆる物を手に入れた後のアビゲイルの放漫さなど、人間の欲望や貶めるダーティーさなど心地よいぐらい人間の汚さを描いている。