河瀬直美最新作『Vision』①
『萌の朱雀』、『沙羅双樹』、『殯(もがり)の森』、『2つ目の窓』の河瀬直美ワールドの極みのような河瀬直美映画だった。
森というか山に囲まれた奈良県吉野郡吉野町に住む40代独身男性の木こりの家にフランスからやって来た女性エッセイストが滞在し、謎の薬草「ビジョン」を探すという物語。
テレビ、ラジオ、パソコン、スマホなどが一切出ない、山に囲まれた一軒家で素朴に暮らす男性と近所に住む盲目の老女の静かな生活を見ているだけで、清い小川のせせらぎや佇む湖を見つめる安らぎを感じる。そんな中での外国人滞在記だから流れが乱れるのは当然で、その変わり様が面白い。
上記で挙げた河瀬直美の過去作品でも自然を感じさせる作品であったが、『Vision』はそれ以上に自然を強烈に感じさせる。それは“風 ”、“光”、“緑”、“動”から森・山の中の涼しさ、木々や土の匂い(もちろん実際にはしないが)などを感じ取れる。
そこから人がほとんどいない静寂の世界、好き、愛など人の心の動きも見逃せない。