『タクシー運転手』
同じ国民同士の内乱で、何の罪もない市民に対する理不尽な暴力を生々しく描いた点ではキャスリン・ビグロー監督の『デトロイト』に類した作品だが、ドキュメンタリータッチと暴力性にクローズアップされた『デトロイト』とは微妙に違う。
まず、ソウルのタクシードライバーとドイツ人記者ピーターによる言葉がいまいち通じない同士のバディ・ムービーであること。
それと何よりもソン・ガンボの独特なコメディセンス。間合いといい、前半のこすい感じが憎めない。
そして、韓国の南側の地域・光州の人々の温かさを全面に出したドラマにホロッと来る。給油所でサービスで金額以上にガソリンを入れたり、夜遅くに見知らぬドライバーの車の修理に嫌な顔をせずに付き合ったりとなにかと温かいおもてなしを見せてくれる。
それが故に中盤以降に彼らが理不尽な暴力にあうシーンに胸を痛めるし、クライマックスシーンのカッコいい演出に胸が高鳴る。
ラストの爽やかさにやはりマーティン・スコセッシ監督の『タクシー・ドライバー』を見た。
自国のブラックな題材に臆しない韓国映画の傑作!