『ラストレシピ ~麒麟の舌ね記憶~』
いわば戦前と現代をつなぐ時空を越えた料理のミステリー。そのレシピが出来る流れと行方を追う展開の中で、レシピ作りの中心人物・山形直太郎と才能を持ちながらも自らの店で失敗をする佐々木充は共に心をも失い、味の追求に我をも忘れる。その失った・忘れたものを取り戻すミステリー。
素晴らしいレシピ、究極の味、幸せとは何か?
ここが重要で、この“レシピ”や“味”といったキーワードはそのまま“映画”に置き換えられる。
これがストレートに伝えてくれる映画であった。
ミステリーの性質の大枠こそはジュゼッペ・トルナトーレ監督の『鑑定士と顔のない依頼人』のような感触に『おくりびと』にも通じる人の心のドラマ。
滝田洋二郎監督の上手い所は『おくりびと』もそうだが、映画マニアが喜ぶような手法やオマージュの類いは出来るだけ使わず、ストレートに面白い作品を作る。
その滝田洋二郎監督がおそらくこだわったのは映画の中の登場人物に職人の姿勢・プライド・気質を投影している。今回の『ラストレシピ』で言えば山形直太郎と佐々木充にはこの職人気質というのが物凄く現れている。