本作は記憶喪失もので、普通この手の映画では、記憶が甦ったり、悪夢を見たりする場面は「如何にもソレと分かる」映像が出てきたりするものだけど、この作品では「今主人公の目の前で起こってること」と、「彼の甦った記憶」がまったく同じ質の映像で、つまりは等価のものとして撮られている。
これは、最初は見ててちょっと混乱もするのだけど… 多分、本当に”そういう症状”になった人には、過去も現在も「同じこと」のように感じられているのだと思う(そしてそれが自分の意思に関係なく、急に目の前に浮かんでくる感じも。なんだか「スローターハウス5」みたい)
だから、その「そっけなさ」の方がリアルなんだと、この監督は信じてたんじゃないかな。
(で、「この辺の感覚に赤狩り後の彼の経験が反映されてるのだ!」って言ったら、それは単純化しすぎかな)