冷たい熱帯魚
村田のような人間はどこにでも居る。詐欺師ならば運が良い方、下手すりゃこのように殺人鬼である。社本のような人間もどこにでも居る。人畜無害な顔で面倒な現実と対峙せず、都合の良い夢想ばかりしているから周りの人間に愛想を尽かされ、悪魔に弱さを見透かされて利用される。人体解体場面などの表面的なグロテスクさよりも、まるで人間の皮をぐるりと裏返して臓物と一緒に醜く恐ろしい内面をぶちまけるが如き話の展開が醜悪で悍ましい。村田は私だ、社本は私だ。それは何度も裏返る。ぐるぐる。やがて社本と村田は裏返り、最後に娘が…!落ちの着地点をそこまで穿つかよ、と感服した。