Agathiyar (Tamil - 1972)をDVDで。
ジャケ写があまりにもっさりし過ぎていて、長いこと放置していた一作。アガスティヤ仙というのは実際に短矩の中肉男という伝承であるらしく、作中何度か、お前のような小男がとか言われていた。主演はカルナーティック歌手のシールカリ・ゴーヴィンダラージャンで、当然ながら歌はセルフダビングのはず。フィルモグラフィーを眺めてみると全くの素人でもないらしく出演作が10本あった。実写と書割が共存する屋外シーンの撮影にクラクラ。キャストもあまり知った顔がおらず、全体的にB級&ヘタウマ感が横溢。タミルのバクティものによくあるように、切れ切れの説話が数珠つなぎに13も。全体に神話というより素朴な説話風で、テルグ・バクティのあのインテンシブな陶酔とは程遠いのだが、タミル人の自意識をクッキリと浮かび上がらせる描写が知的好奇心を掻き立てる。多くのサウス産神話・バクティ映画でないことにされる、ヒンドゥー教の北インド起源という事実が、ここでは真正面から取り上げられており、そのうえでご当地の神話・伝承をインド的なスケールの中で取り上げるというユニークさ。面白かった。