Bramayugam (Malayalam/2024)をオンラインで。
ホラーという予備知識のみで見た。舞台は17世紀の南マラバールとテロップが出るが、今日の狭義のマラバールであるらしい。地方領主の宮廷に仕えていた民謡歌手が、クーデタか何かで居場所を失い故郷に歩いて帰る途中で、巨大な廃屋のようなマナに紛れ込み、当主に寝食を提供されるが、そこから出られなくなってしまうというもの。全編モノクロ。低カーストの民謡歌手の歌が清澄で美しい(ソングに字幕なし)。序盤とエンディングを除き、当主と料理人と楽師の3人だけの緊迫の芝居。ヤクシがほんの一瞬アクセントで現れるだけ。怪異の描写に怖さはないが不条理が不気味。特に出立を決意した楽師が暇乞いをすると当主が雨の中無理をするなと引き止める。するとたちまちに土砂降りになり、何日経っても止まないところ。カーストの差別は直接的なエピソードで語るのではなく、観客の知識に任せる。そこで植民地主義勢力もフレームに加え、権力にまつわる哲学的な示唆を含む結末とした。夜叉(ヤクシ)と妖魔(チャータン)はマラヤーラムの怪談やファンタジーのキーエレメントだとの認識が深まった。