Nanpakal Nerathu Mayakkam (Malayalam/2023)をNTFLXで。
リジョーとマンムーティの新作がこんなに苦労せずに見られていいのかという倒錯した感情。ヴェーランガンニ聖堂へのお参りバスツアーのケーララ人グループ。エラナクラムへ戻る途中、おそらくディンディガル~テーニあたり(実際のロケ地はパラニ)の畑で用を足そうとバスを止めたジェームスはそのまますたすた歩いて畑の奥にある村に入り、スンダラムというタミル人として振る舞う。スンダラムはかなり前に雲隠れした男だった、という話。ジェームズやその同行者に見られる微かなタミル人への侮蔑が示される冒頭が上手い。言語的にはタミルが川上なのに、民度で上手に立つケーララの図式。何よりも心打たれるのは、旅行中の車窓に現れては一瞬で過ぎていく「縁のない土地」に降り立ち身を置くことの不思議さ。そこにも多数の人生があることは頭では分かっても全く実感のない「他人の故郷」が突如現実となる身震いする感覚。そして魔術的な午睡から醒める瞬間のあの眩しい永遠の現在時。これを印映で味わったのはインドラガンティのGrahanam以来かもしれない。