Aligarh (Hindi/2016)をオンラインで。
LGBQ差別を告発する戦闘的な映画かと思っていたけど、そうではなかった。シラース教授はムスリム大学の中にありながらヒンドゥー教徒ブラーミンで、人気のない現代地方語学部のトップでマラーティー語の教授でもある。性的嗜好以前にすでにマイノリティー。そして俗世には興味のない旧時代の詩心を生きる人物。人生の友は詩と酒と愛。ディープーに会った時の「君ら若者は何でも1語で片づけようとする」という台詞が象徴するように、レッテル貼りを嫌う。ゲイという言葉も彼にとっては新奇なもので、性交をしていた相手のイルファーンのことも友人としか呼ばない。かつては妻帯していたこともある彼は、女性、イルファーン、ディープ―とのそれぞれの関係性に分かりやすい1語のレッテルを貼って確別しない。それぞれが薄っすらと連続した愛の関係であるかのようだ。大学の教員宿舎から始まって、その後転々とする住処はいずれも寒々と寂寥感漂う場末だが、64歳の彼の周りだけはそれを認めまいとするかのようなある種の優雅さが漂う。最後に謎なままに残ったのは下手人というよりイルファーンの共謀の有無か。