カンボジアの失われたロックンロール(米・カンボジア/2014)をオンラインで。
国際交流基金のCROSSCUT ASIAおいしい!オンライン映画祭アンコールにて。カンボジアの20世紀を語ることは、ジャンルが何であれ最後は鎮魂歌になってしまう。驚異の映像に目を奪われながらもひたひたと迫るカタストロフを予測しながら見る。登場した一人が語っていた「下放先では歌手と名乗らず、バナナ売りをしていたと言った。それで命が助かった」という言葉。しかし逆に言えば現在もかの地で「昔はルージュで暴れてた」というのを言わずに暮らしてる者もいるんだろうなと。50~60年代、音楽の風はフランス、キューバ、南米から吹いていたと。そして70年代前半になってアメリカ音楽が圧倒したのだという。しかしどこの音楽が席巻しようとも、結局カンボジア風味にフュージョンされてしまうところが面白い。グラマラスな50年代のプノンペンは幻惑するが、首都の繁栄と享楽の陰で、きっと地方では貧困の中でルサンチマンを募らせていた農民も無数にいたのだろうことが察せられる。「運命に翻弄された悲劇の小国」と某ルポライターが書いた「ダメな国」とが明滅する。