Churuli (Malayalam/2021)を東京国際映画祭で。
一筋縄ではいかないと思ってたけど、今回もまた西ガーツ山脈の限界集落を舞台としている。カンナダ語の看板がかかる市のようなものが立つシーンだけが人工的なもので、あとは圧倒的な森林とそこにへばりつくようにして立つ貧しい家々。二人のへっぽこ刑事が迷い込んでいくのは、僅かな人間の住む寒村ではなく、螺旋状にうねりながら意志をもって息づいている大自然そのもので、その住人たちは意志持つ大自然の触手に過ぎないのではと思わせるものがあった。またしても「ラテンアメリカの孤独」の再現か。当初SFとも言われていた本作だが、実際はかなり独特なコメディー・ホラーとでもいうべきか。集まった村人たちがある瞬間を境に不気味な表情を見せたりするのは微かに怖いのだが、それは怨霊などではなく、地霊というか自然の一側面に見える。アート映画の中で、ユーモアを追求するリジョーの姿勢はあっぱれ。ともかく圧倒的な森林浴効果があるので、もっとゆったりしたシネコンのシートで再見したい。冒頭のシヴァ派の坊さんの話以外で朗読されるのは黙示録か。大自然と交感して共鳴する夢の世界。