天気の子(2019)をJPAPで。
SNSで「本作の主人公のような反社会的なキャラクターが許せず作品そのものを否定する観客が増えている」と読んで気になったので。で、見てみて拍子抜け。この程度のものが許せないなら、従順な飼い慣らされた社畜のトレンディードラマでも見とくしかないだろ、というものだった。社会の規範からの逸脱を志向する詩的なエクソドスにいちいち文句つけてどうする。まあメガヒット作品で普段映画を見ないような観客の目に触れるとそういうことも起きるのか。尤もらしい神事とか捏造された伝説とかが大きな顔して出てこなかった点で、前作『君の名は。』よりもずっと良かった。震災の傷痕文学だった前作とは異なり、これは東京という土地への美しいオードだと思った。どれほど壮大なビジュアル出会っても舞台は東京の区部のみ。主人公が後にしてきた離島ですらが行政上は東京。エピローグの長雨で水没するのはどうやら東京だけで、他の地方に被害は及んでいないようだ。前作ではまだ記号的だった東京のヴィジョンが、異様なほどの細部とこの世のものとも思えない光とに満たされて画面に広がる快感。積乱雲の上の永遠の晴天を造形する力強さ。