Sufi Paranja Kadha (Malayalam/2010)をDVDで。約8年ぶりの鑑賞。
不当に無視された一作だと改めて思った。ヒンドゥーとムスリムの共存と融和みたいな分かりやすいテーマにすれば映画祭では好評だったかもしれないが、映像作家はそういう安易な道を取らなかった。むしろ19世紀前半のマラバールの社会の総体を価値観を交えずに描き、そこに時空を超えたマジカルな女性のパワーを現前させた。冒頭に登場するビーウィーとだけ称される女性の聖人は、ちょうどケーララの地母神がバガワティーとのみ称されることの対照か。また縁起を説くスーフィー(バーブ・アントニー)が、劇中で最後はサニヤーシーとなって登場するシャング・メーノーン(タンビ・アントニー)と同じ顔(そりゃ兄弟だから)なのにも意味があるかもしれないと気づいた。インドではクリスチャンもムスリムも先祖をたどれば大体ヒンドゥーという当たり前だが言いにくいことを認めたうえで、大伝統の神を遥かに凌駕する、土地の霊力と共にある古来の神の存在の根深さをクッキリと指し示した。性的な表現も厭わない本作だが、一番エロティックなのは女神像発見のシーン。