『カーラ 黒い砦の闘い』をキネカ大森で。
大きな画面で見るのは3回目。平日昼間で50人ぐらいは埋まっていたか。鑑賞後に知り合いと話をしていた際に、女番長プヤルが最終シーンに顔を出していなかったことを指摘され、うむむと思った。しかし近年この作品ほど演技者としてのラジニをたっぷりと見せてくれるものは無かったのではないか。前衛的なラジニ歌舞伎であると同時に、時折芸術映画のような風合いで、追い詰められていく還暦過ぎの男を超リアルに映す。この演技者ラジニの爆発は、やはり敵役に稀代の演技派ナーナー・パーテーカルを持ってきたことによるのではないかと思う。ナーナー演じるハリがカーラと握手したすぐ後に手をふらふらとさせるあの箇所は、何度見ても息をのむ。ラジニの方も、たとえば警察にしょっ引かれたシーンで、ちゃらんぽらんな受け答えをしながら、突然「黙って引っ込んでろ!」と一喝し、小者を文字通り吹っ飛ばすシーンなど、迫力がある。ラストのあれは北インドのホーリーの色粉掛けから着想しているのだということ、観ている人に伝わっただろうか。カラフルな色粉を投げ合っているうちに、いつしか真っ黒になってしまうというあの逆説。