キネカ大森で『ベルボトム』。
映画館では半年ぶりぐらい。ほわんとした呑気空間に癒される。インド映画の常で、謎ときは脱力するほどに単純で、推理マニアを喜ばせるものでは全くない。それから、主人公の憧れの対象としての探偵&諜報部員というのが、それぞれ職能としてはかなり隔たっているのに、一緒くたにされているところもインドらしい。他の人の感想にもあったけど、IMWの他の上映作の高密度ぶりに対して本作の盛り上がりのなさは特筆ものなんだけど、それでも飽きずに見せる、これが不思議。これは天然ボケではなく、知的に緻密に組み立てられたレトロおとぼけワールドなのだ。80年台ファッションは見れば見るほどイケてるけど、これもそのまま持ってきたのではなく、今日のデザインセンスでの再構成を感じる。それからリシャブ・シェッティの顔の魅力。何年も芽が出なかった人だけど、そしてこれ見よがしの男前ではない(まあ、カンナダスターは皆だいたいそうだ)けれど、目が離せない不思議な磁力を持っている。そうしたもの全てが相まって、タメになることは何一つなく、劇的な盛り上がりもないのに、訳もなく楽しい130分という得がたい1本となった。