キネカ大森で‘96。自分にとってIMW初作品。
観客は30人ほど。しばしば字幕を忘れてリードペアの演技に見惚れた。SKIPシティ常連にとってキネカはややショボいハコで、特にサウンドは物足りないけど、やはり大画面はいい。皆がVJSを絶賛するけど、トリシャーも一世一代の名演という認識を新たにした。スラリとした立ち姿が本当に美しい。恋愛映画というのはインドには目新しいジャンル。幕の内弁当スタイルのファミリーorアクション映画の中で恋愛は必須アイテムだけど、それは往々にして様式化されていて、ストーリーを回すための動因扱い。恋愛感情自体をじっくり描くことは比較的珍しいし、また描くのが上手いと思えるものも少ない。本作は揺れ動く心そのものがテーマ。ただ、映像作家の心には、常にオーバーアクトを抑制する強いストッパーがかかっていたものと思える。2人が最後に見交わす搭乗シーンを入れなかったのもその一例か。心の叫びは表情とBGMで表現される。そして冒頭ソングを除きほとんど全曲が女の側の心象を歌う。2人の物理的距離が縮まるにつれ男は別れを見据え冷静になっていく。やっぱりAnthaathiは映像化して欲しかった。