Ulidavaru Kandante (Kannada/2014)をDVDで。
ちょっと確認したいことがあって部分チェックだけするつもりが、面白くて全編見てしまった。羅生門スタイルと言うことだが、最終的に観客は神の視点を持つことになる。それよりも面白いのは、ねっとりとベタつく潮風の感触、ジャンマシュタミの祭事を祝う人々の常ならぬ興奮の気配、といった芸術映画的な何ものか。魔術的リアリズムといってもいい。正義を体現する人物が一人として登場しないことによってもそれが強まる。カルナータカ沿海部は内陸部の保守的・内向的な気性に対して開放的との印象が一方にあるけれど、何本か見た沿海部もの映画には、それを打ち消すような陰惨さや狭量さもあって、一筋縄ではいかない。カンナダ語、トゥル語、コダグ語その他の言語が飛び交い、影を内包する強烈な日差しに照り付けられるうちに物事の意味というものが溶けていくようなあの感じは中二病的なロマンを掻き立てるものがある。一連の流血の原因となった眩いお宝というのが何なのか、クリシュナ神話の最後の方に出てくる、岸に流れ着いてそれを見た人々を狂わせ、相互の殺戮に導いたアレのような。