『残菊物語』(1939)をYTで。
印度芸道ものについて布教しようとしていながら、日本の同ジャンルでの著名作を見ていないことにハタと気づき、慌てて鑑賞。忘れないうちに書いておきたいが、主人公が東京に戻って晴れ舞台を踏むが、その演目がよく分からない。洋風の衣装が気になる。所作はほとんどカタカリ。レビューなど沢山あるのにどれを読んでも記載なし。ストーリーは折り返し地点前からくっきり見えてるけれど、その裏にある価値観が興味深い。若旦那としての地位を投げ打ち苦しみながら芸を磨く主人公だが、「役者の成功は家柄あってのもの」と諭されて古巣に戻る。そして都落ちして脇役を演じていた大阪の芝居小屋からも解雇され、旅回りへの参加を進められるシーン、はっきりと旅回りへの嫌悪感を表す。実際に一座に加わっても、「ちょっと見得を切るだけで大喜びするような客」と、大衆演劇の観客を見下す。騒々しい客席との交感によって高められる芸はないということか。明治の時点で歌舞伎はそこまで高級なものとなっていたのか。一方、ヒロインのお徳は、子守りの奉公女でありながら、菊之助の芸の良しあしをはっきりと見極めて苦言を呈したりもしている。