美しい その2
然し、テレビを見ている人間の真に迫らない。それはテレビで何度も見掛けるような、溶けて崩れる氷の映像では見慣れた光景だ。フリップを持って、遠いところで干ばつした場所の説明をされても、リアリティを感じない。自分の持ち時間の最後に、変なポーズをするオッサンが珍しいから画面に注目するだけ。
彼は自分を自由に操作出来るようになったが、世論を操作する事は出来なかった。
余りにもマクロな視点で語るリアリティの無い気象予報士のオッサンは、もっと重大な環境問題に目を向ける必要がある。それは家庭という環境で、温暖化なんぞ目じゃない。彼は只々のオッサンではない、父親なのだ。
父親を自覚し始めた彼は、娘の異変の原因を調べるが、旅先で青あざを付けて帰って来る。青あざは後を引き、冷徹な視線を持つ相手との対峙の時に肉体の痛みとして、人の親として妥当な痛みを感じさせる。怪しいボタンから始まる痛みは、人間としての肉体が今迄忘れていた限界と終点を告げる。