アメリカンスナイパー
素晴らしい作品だった。一周見た考察点は主に3つ。
1点目はクリスの心の変化の過程。アメリカの典型的な家父長制度が根付く家庭の中で自身で積極的にアメリカのイデオロギーを刷り込んでいく様子が冒頭で描かれているのに対して、だんだんと自身で刷り込んでいったイデオロギーに懐疑的になっていく過程が見事だった。
2点目はあれを見たアメリカの反応。リベラルと保守で論争が起きた点は制作サイドの意図通りだったと感じた。何よりあの英雄的なラストシーンで作品を締めた後の無音のエンドロール、メッセージ性を感じざるを得ない。それに一度もアメリカ国家が流れなかったという点も不用意に映画自身がプロパガンダとして機能するのを避けてたように見える。
3点目は精神分析的観点。クリス単体よりも描かれている世界全体を対象に、帰国した後に描かれるハイパーリアル、そして手放さなかった聖書やコーランといった「神」から連想される正義論の話。ジェームソンの封じ込め戦略をはめ込んだ時に、生まれていた必然性はなんだったのか、ここはもっとちゃんと論文とかで検証する必要があると感じた。