「ブラジル 消えゆく民主主義」の感想です(2/2)
この映画の中で、かつて民主主義を達成したはずのブラジルの労働党に対して、民衆は攻撃を始める。一旦、そういう「空気」が醸成されてしまったら、もう誰にも止めることはできない。「空気」のみが支配する世界。その世界における正義と悪は、民衆の感情によってのみ判断される。昔から暗黙の了解とされてきた賄賂文化が、民衆の感情により、突如として悪になる。もう何が正しいか分からない。個人の感情の集合が存在してるだけ。もちろん、それを先導しているのはメディア。しかしメディアが全て悪いわけではない。要は、ブラジルは民主主義国家になりきれていなかっただけの話。
「空気」が支配する世界の恐ろしさについては、日本では山本七平が語っている。これを山本学と呼ぶのだが、この映画にあるのは正に、山本学における空気だと思った。
そもそも民主主義というものは、極めて特殊な条件下でしか機能しないものであるということ。その観点からすると、日本の民主主義は機能していない。日本は、民主主義の仮面をかぶった、最も栄えた社会主義国家であるとの主張さえある。