ニーチェの馬
一時停止状態にでもなっているのかとさえ疑ってしまうくらいじっとした映像が多く、そして表情の薄い父と娘がぼそぼそとじゃがいもを食べたりしていく、ある意味ではとても退屈な映画。けれどその退屈さを、その先に救いなどないと初めから予感しながらなぜか見てしまいます。そして見るに連れて「果たしてこの二人は何のために、何を求めて生きているのだろう」という疑問が頭から離れなくなり、そのときにはもうニーチェの思想圏内で「無意味な生にそれでも『然り』と言えるか」と問われてしまっている。不思議な映画でした。面白いとも好きとも思ったわけではないけれど、つまらないのではなく、確かな力があり、そのことをうまくまだ処理できずに戸惑っています。