『ジョン・ウィック チャプター2』
因果律の要素を受け継ぎつつ「もう、ほっといてくれ…」という男の心情を殺戮アクションという「主観」で描き切った現代の『拳銃王』。
前作よりスキルアップした筈のアクションも元来のもっさり感を醸し出すキアヌ・リーヴズの肉体を借りるとドン臭さが買ってしまう不思議。そして、それが全くマイナス方面にならず「引退したいがためにどんどん戦場に身を委ねなければならない男の不条理劇」とマッチした気だるさとやるせなさで作品を包む不思議。
不条理とアクションの申し子であるバスター・キートンが冒頭のビル街に映し出されるのもさもありなん。コモンやルビー・ローズのやりきった姿がキアヌのアクション映画の主人公とは思えないラストの“余裕ゼロ”な疾走をより強調していて悲喜劇としても秀作。
それにしてもライブステージでキアヌが刺客を撃ち殺した時の観客歓声場面の何と素晴らしいことか…。これこそ映画の殺人。スクリーンの殺戮に拍手を送る観客そのもの。背徳的かつ真っ当な描写。かつて007にあった輝き。